ぬま塾 vol.24

ぬま塾 vol.24

こんにちは、地域支援員の矢野です。
「お盆が過ぎたら、気仙沼の夏は終わりだよ。秋に向かって涼しくなる一方だよ〜」とよく聞くことがあったのですが、お盆が過ぎても真夏の暑さが…今年の夏は暑くて長いですね!

そんな夏まっただ中の2018年7月25日(水)に、第24回ぬま塾を開催しました。
今回のゲストは、株式会社紅梅 取締役専務 千葉 洋平さんです。

魚町に本店がある和菓子屋さん、「紅梅」。
気仙沼では「手土産には紅梅さんの揚げパンを買っていけば間違いない」というほど、大人気の揚げパンがあります。
毎日約1000個もの揚げパンを作っていらっしゃるとか。

「自分らしく生きる」
この言葉がぴったりな千葉さん。
お菓子づくりが好きという訳ではないけれど、「気仙沼に和菓子を届けたい」という使命感からここまで来られたそうです。

ぬま塾 vol.24

この日の参加者は14名。
参加者からの質問に答えながらお話いただく時間も設け、ゲストとの距離が近く感じられる会になりました。

講話

ぬま塾 vol.24
ここでは講話のポイントをいくつかご紹介します。

  • 自分は3代目の跡取りとして生まれたので、まわりの人がチヤホヤしてくれた。祖父母、従業員さん、父の妹(おばさん)など、甘やかしてくれる人がたくさんいた。甘やかされていることに危機感を感じたのか、父親はとても厳しかった。ことあるごとに「お菓子屋をやれ」と言われ続けてきて、自分はそれがとにかく嫌だった。
  • 親からは、「高校卒業と同時に修行に行け」と言われていたけれどもその気はなく、大学を受験することにした。当時は外国製の雑貨が入ってきた時代でもあり、なるべく気仙沼から遠くて、輸入っぽい長崎国際経済大学を選らんだ。ところが、学校の三者面談で長崎国際大学は見事に却下された。理由は「遠い」ということだった。家計が経済的に厳しいので、代わりに国立の福島大学を勧められて受験に行ったものの、すごく田舎で魅力を感じられず、浪人すると自分の中で決めた。しかし両親からは、「浪人するくらいなら私立の大学に行け」と言われ、偶然同じクラスの子が持っていた余りの願書をもらい、秋田経済工科大学を受験して入学した。
  • 大学5年生になり、就職活動を始めるという時期になった。親がしつこく「お菓子屋になれ」と言ってくるなかで、自分自身も「なぜお菓子屋になるのが嫌なのか」明確な理由がないことに気がつき、その理由を探すためにお菓子屋になろうと思い、お菓子屋さんへの就職を決めた。
  • 全国各地のお菓子屋さんの面接を受けていたなかで、「仙台もいいな」と思い、玉澤総本店を紹介してもらった。店舗を見に行ってみると、今まで見たこともないような綺麗なお菓子がショーウィンドウに並んでいて、「これは気仙沼の人も見たことないんだろうな」と思った。「これを自分が気仙沼に持って行くのも良いかもしれない」と思い、玉澤総本店を受けることを決めた。
  • 玉澤総本店に就職し、初めて会いに行ったお茶の先生は、表千家の宮城県の支部長である石巻の先生だった。お茶菓子の見本を持って行って、2時間ほど話をした。入社して3年半で生産主任になってから、生産計画を立てるために外注伝票をチェックするようになった。伝票に“気仙沼”という文字を見つけて、「石巻の先生とは2時間もお菓子の話ができたけれども、気仙沼の先生は伝票1枚だけのやりとりしかできなくてきっと大変だろうな」と思った。それがきっかけとなり気仙沼に帰ることを決めて、戻ってきた。
  • 気仙沼に戻ってきたことは正解だったが、家業の経営体制が課題だった。周りのお菓子屋さんも同じように家族経営をしているなかで、よく「後継者問題」の話を耳にしていた。気仙沼のお菓子屋さんも会社化していかないと、このままでは先細りしてしまうと思い、まずは「実家の会社化」を目指した。
  • 中学生や高校生がインターンシップや職場体験に来ることがあるが、その中に「紅梅で働きたい」「お菓子屋さんになりたい」と言ってくれる子がいるけれども、そういう子たちを雇うほどの余力がないという現状がある。自分たちのお菓子をもっと市外で売って仕事をつくれば、子供たちにも仕事をつくってあげられるのではないかと考えている。
  • 小さい頃から家業を継ぎたくないと思っていたなかで、ここまで続けてこられたのは、「気仙沼の人たちに今までなかったようなお菓子を紹介したい」というモチベーションがあったから。くじけそうになったらそれを思い返していた。また、仙台にいた頃にお世話になった職人さんに「“商売は細く長く”だよ」と言われたことがあり、そんなに大したことをしなくても、次に繋げればそれで良いのかなとも思っている。
  • 仙台で就職して1年目の頃に、レコードを探しに福島へ行ったことがあった。その時に見つけたお干菓子屋さんがすごく衝撃的だった。じいちゃんがランニングに半パンで、扇風機を回してお干菓子屋さんをやっていたその姿がすごく「自由」で、将来こうなりたいと強く思った。今でもそれを目指している。
グループワーク

ぬま塾 vol.24

今回は、お隣に座っている2、3人でグループをつくり、千葉さんのお話を聞いた感想をお互いに共有しました。

参加者のこえ

参加者のみなさんの「感想」をご紹介します。
《感想》

  • 「何かあきらめたときに、新しいことが始まる」といった話が印象的でした。諦めることへの潔さを感じました。
  • 「今までこうしてきた、こう生きてきた」と熱い方が多い中で、たんたんと、流れるように、でも要所要所おさえてきた千葉さんの話を聞くのが、純粋に楽しかったです。
  • 上質なドラマを見ているような、丁寧で素敵な会でした。

 
ぬま塾 vol.24

参加者の方の感想にもありましたが、
「今回を機に自分の人生を振り返って気づいたことは、だいたい諦めた時に扉が開くということ。」
という千葉さんのお言葉が、私にとっても印象的でした。
“諦める”という言葉を聞くと、あまり良いイメージを持たないことが多いと思いますが、本来の言葉の意味は、【明らかに見る】という意味だそうですよ。

今回も新しい学びがあった、ぬま塾vol.24でした。
次回のぬま塾もお楽しみに!