ぬま塾ビヨンド(vol.15)

ぬま塾 vol.15

新年あけましておめでとうございます、地域支援員の矢野です。
昨年2016年10月13日(火)に開催しました、ぬま塾ビヨンド(第15回ぬま塾)の様子をお伝えします。

みなさん、「認定NPO法人底上げ」をご存知でしょうか。
震災後に立ち上がったNPO法人底上げは、気仙沼市内と、おとなり南三陸町にて、高校生の主体性や郷土愛、自己肯定感を育むことを目指し、「まちのために何かしたい」と考える高校生の活動を支援する取り組みをされています。
今回のゲストは、NPO法人底上げ 代表理事 矢部寛明さんです。

ぬま塾 vol.15

今回の参加者は36名。そのうち市外からの参加者が12名と、全体の3分の1を占めています。関東、関西から、矢部さんのお話を聞くために、たくさんの大学生が来てくださいました。

講話

ぬま塾 vol.15

矢部さんが気仙沼にたどり着くまでの出来事や、気仙沼で活動を始めたきっかけなどを、当時のご自身の想いや、経験から学んだことも併せてお話しくださいました。

ここでは講話のポイントをいくつかご紹介します。詳しい講話内容は、後日公開予定の講話アーカイブをご覧ください。

  • 高校2年生の時にビリヤードの世界に入り、世界大会の強化選手に選ばれたことから、ビリヤードで世界に挑戦していきたいと思うようになった。しかし日本代表選考会の予選で敗退し、日本代表選手からもれてしまった。このタイミングで高校を卒業し、フリーターになった。友達、まわりの大人の言葉が冷たく聞こえて、居場所がなく、オーストラリアへの留学を決意する。
  • オーストラリアでは毎晩のように浜辺に行き、「これからどうやって生きていくのだろう」と考える日々が半年間続いた。悩みすぎて10円ハゲが4個できた。「“自由”がつらい、“所属していないこと”が、こんなにもつらいのか」ということに気づかされた。
  • 1年のオーストラリア留学を経て、「ビリヤードで世界に挑戦したい」という想いが固まり、日本に帰国後、ビリヤードのプロ選手を目指し始める。
  • ビリヤードを通して、いろいろな人に出会う機会に恵まれた。社会にはいろいろな人がいて、いろいろな価値観があるということを知った。しかし、ビリヤードのプロの世界に入るタイミングで、「自分の人生に厚みがない」と思い、大学への進学を決める。
  • 23歳で大学に行くことを決意した時、友達からは「これまで勉強をしてこなかった矢部には出来ないよ」と言われたが、大学受験に合格した後には、「やっぱり矢部はできる人間だよ」と言われた。その時に、「人は他人には興味ない」ということを実感した。そして、「これまでは人の意見ばかり気にして生きていたけれども、これからは自分の人生を生きていこう」と思うことができるようになった。
  • 大学入学後、初めての授業で「地球温暖化」について学び、「悪化していく地球環境に対して、自分自身がどう取り組んでいけば良いのだろうか」と考えるようになった。そして、環境について教えてもらおうと国会議員に会いに行った。しかし、当時の環境副大臣に、「実は私、環境のことを良く知らないの。矢部くん、環境のこと教えてよ。」と言われた。「ひとりひとりが動かないといけない。えらい人に任せているだけではいけない。」ということに気づいた。
  • 「どういうふうに“環境”をポジティブに、楽しく伝えていくか」ということを考え、自分が好きな“自転車の旅”と“ブログ”を通じて環境問題を訴える活動を始めた。東京から名古屋を経由して沖縄、そして四国を一周、2008年には東京から北海道までママチャリで旅をした。
  • 公園にテントを張って野宿をしていると、多くの人は怪しがって通り過ぎていくが、東北の人は話しかけてくれた。そしてウニ、カツオなどを持ってきてくれたことから、「東北の人はとても優しいな」と思った。
  • 東日本大震災が発生。ママチャリの旅でお世話になった気仙沼に対して何かしたいと思い、内定をもらっていた会社を辞退して、気仙沼で活動を続けることを選択する。
  • 2012年の夏から学習支援の活動を始めて、地域の高校生がもつ「諦め」「自己肯定感の低さ」「郷土愛のなさ」が気になるようになった。「新しいことに挑戦しようとしない文化」が気仙沼にあるように思われた。「ハード面を整えるだけでなく、ソフト面(心)も変えていかなければ、本当の復興にならない」と思った。
  • 何か新しいことに挑戦する時、不安要素・できないことをあげたらきりがない。人はいつ死ぬかわからないし、人生は辛いことの連続である。それならば、意識的に楽しいことをやっていくしかない。感動の連続が人生を豊かにするのであれば、その状況を自ら作っていくしかないと思う。この考え方をすると、不安要素を乗り越えて活動することができる。すると、結果としてうまくいくことが多く、それが成功体験になる。そして、安心できるゾーン(コンフォートゾーン)を広げることが出来る。
  • 仲間がいたから、これまで気仙沼で活動してくることができた。最大の強みは、まわりの仲間である。
グループトーク、質疑応答

ぬま塾 vol.15

講話終了後、3~4人一組でお互いの感想をシェアしました。「新しい面白い人と出会うことが出来た」という声があり、ぬま塾が新しい出会いのきっかけにもなるようです。

グループトークの後は、ゲストへ質疑応答の時間です。その中から今回は1つ、ご紹介します。
《参加者からの質問》
矢部氏は非常に行動力があるが、ご自身のビジョンに向けて行動されているのか、もしくは単純に目の前のものがキラキラしているから飛び込んでいけるのか、どちらのタイプか?
《ゲストの回答》
どっちでもある。「なんとなくこうなったら良いな」と思うことがあり、それに向かって行動している自分がいる。一方で、1日1日の積み重ねが未来になると思っているため、1日をどう輝かせるかに集中して生きている。わからない未来は、不安。わかっていることは、過去と今。今、自分が全力で生きていれば、10年後の自分は今より能力が高くなっているはずである。だから、今この瞬間に対して気を抜かないことを強く意識している。偶発的起こることを気にするのではなく、「今どうするのか」ということを考え生きている。

参加者のこえ

参加者が、講義の中で「印象に残ったことば」と「学んだこと」をご紹介します。
《印象に残ったことば》

  • 人は基本的に他人に興味がない
  • ひとはいつ死ぬかわからない
  • 行動はメッセージ

《学んだこと》

  • 「行動がすべて」というお話から、行動からしか人は見えてこないし、考えや思いは伝わらないと気づいた。

NPO法人底上げの活動コンセプトである「行動はメッセージ」。
これまで常に行動をおこしてきた矢部さんの生き方、そのものを表す言葉ですね。だからこそ、多くの参加者の心に響いたのではないでしょうか。
次回のぬま塾もどうぞご期待ください!