ぬま塾 vol.12

ぬま塾 vol.12

こんにちは、地域支援員の矢野です。
平成28年3月14日(月)に、平成27年度最後となる、第12回ぬま塾が開催されました。

みなさん、オイカワデニムをご存知ですか?
気仙沼市本吉地区。
高台にある小さな町工場で、世界中に愛されるデニムを製造している会社があります。
第12回のゲストは、有限会社オイカワデニム 代表取締役社長 及川秀子さんです。

ぬま塾 vol.12

大学の春休みということもあり、東京、広島などの気仙沼市外から大学生が会場へかけつけ、過去最大となる35名の参加となりました。

先輩の講話

ぬま塾 vol.12

「心はみなさんと同じ30代です。」とお茶目な及川さん。
大勢の若者を前にして、笑いを交えながら熱心にお話をしてくださいました。
ここでは、講話のポイントをいくつかご紹介します。詳しい講話内容は、講話アーカイブをご覧くださいね。

  • 小さい頃から大切にしている親の教えがある。
    「常に心を平らに持って、志を高く持ち、上を見て生きろ。決して贅沢はしないで、慎ましく、下を見て暮らせ。とにかくいつも笑顔でいること。笑顔を忘れるな。そして感謝を忘れるな。」
  • 40代で主人を亡くし、会社の存続を考えた時期に、本吉町主催の女性を対象としたアメリカ研修に参加した。アメリカで出会ったドーナン先生からいただいたこの言葉を、今も大切にしている。「あなたの目の前にいる方を、尊敬しなさい。信頼しなさい。大きな期待をしなさい。そして、国、人種を越えた世界人になりなさい。」
  • バブルが崩壊。安い賃金を求め海外に仕事が流れ、再び会社存続危機に見舞われる。オイカワデニムのオリジナルブランドを作って、メーカーの下請け業から脱却しようと決意する。どのような経済の波が来ても、従業員さん、仕事を守ることが出来る方法だと思った。
  • 強くて丈夫なデニムを作りたいという思いから、これまでの常識を覆す、綿を麻糸(この世で一番強い糸)で縫う、世界初の技術を開発した。そして新ブランド、“スタジオゼロ”が誕生した。
  • 震災経験後、「世界一のデニムをつくる」という夢を実現する為、新たなブランドの立ちあげを決意。漁師町から生まれるファッションを世界中に広めようと考え、今まで捨てられていた気仙沼の資源である、サメの皮、アワビの殻、漁網、大漁旗、メカジキを活用した新しい商品を開発した。
  • いつかまた起こるであろう天災・震災を決して恐れず、常に命を守る準備をしておくことが大切である。震災後、どのように立ち上がるかは、そこに住む人々、私たちにかかっている。そして、美しいふるさとやみんなの笑顔を取り戻せるのは、その土地に暮らす私たちしかいない。
  • 私たちが生きている今日は、震災で亡くなられた大勢の方が生きていたかった未来である。1日1日を大切に生きていってほしい。
  • “まちづくり”というのは土(気仙沼で生まれ育った人)と風(気仙沼の外から来た人)とのバランスが重要になる。土と風のバランスがちょうどかみ合った時、すばらしい街ができると思う。私はそれを、若いみなさんに期待している。
グループトーク、質疑応答

ぬま塾 vol.12

講話終了後、2人1組となってお互いの感想をシェアしました。相手の話を聞くことで、自分と違うとらえ方が勉強になったという方も。2人ということもあり、お互いに深く話ができたようで、会場はとても盛り上がっていました。

グループトークの後は、ゲストへ質疑応答の時間です。
《参加者からの質問》
“世界人”にどうしたらなれると思いますか?
《ゲストの回答》
私の両親の教えである、“信頼・尊敬・期待・笑顔”がキーワードだと思います。
いつも心平らに持って、どなたにも笑顔で接することができる人。そして、接する人を信頼して、尊敬して、期待して、愛を与えてあげることができれば、どんな国の人達とでも交わることができると思います。

「あなたの笑顔、とってもかわいいじゃないですか。」という及川氏の絶賛に、質問した男性の顔が赤くなるという場面も。

《参加者からの質問》
震災時、オイカワデニムの工場を避難所として開放した及川さんの行動が素晴らしいと思いました。その行動をとることができた、きっかけは何ですか?
《ゲストの回答》
婦人防火クラブの連合会長として、様々な防災研修を受けさせていただいたことをきっかけに、以前から「もし宮城県沖地震が発生した際は、この工場が避難所になるのかな」と漠然と思っていました。またその時は自分がいなくても、工場が避難所として機能するように、一緒に働いている息子たちに指示を出していたんですね。このように、いざという時の決めごとをしておくことも防災だと思います。
そして1番の防災は挨拶をすること。毎日挨拶をすることで、地域の人の様子(誰がどこに住んでいるか)を把握することができます。だから、挨拶をすることから防災は始まると私は思います。

参加者のこえ

参加者が、講義の中で「印象に残ったことば」と「学んだこと」をご紹介します。
《印象に残ったことば》

  • 世界人になる
  • 土の人、風の人のバランス
  • 笑顔を大切に
  • 目の前にいる人を尊敬・信頼・期待しなさい

《学んだこと》

  • 及川さんの考え方や姿勢は自分も日々意識したいと思います。(女性/市外出身/31歳)
  • 新しいことをどんどんやっていこうと思いました。(女性/市外出身/25歳)
  • 想いを言葉にして、時間をかけても形にすること。想い続ける勇気と形にするという目標を改めて思いました。(女性/気仙沼出身/24歳)

70代とは思えないほど、パワフルな及川さん。
“世界人になる”という強い志を原動力とし、さらに相手を大切にする心をお持ちだからこそ、3度もの経営危機を乗り越えて、世界中から愛される今の「オイカワデニム」があるのではと思いました。何よりもご自身の創るジーンズに誇りを持たれていることが、ひしひしと伝わってきました。